「今の勤務先の給与だけで、この先も大丈夫だろうか」
「周りの医師は外勤や執筆で稼いでいるようだが、自分の病院で副業をして問題ないのだろうか」
医師の働き方が多様化する中で、副業に関心を持つ先生は年々増えています。
実際、民間医局の調査(回答者2,288名)では、約80%の医師が副業を経験しており、医師にとって副業はもはや特別なものではありません。
一方で、副業には「研修医・公務員医師は原則不可」「就業規則による制限」「時間外労働の上限規制との通算」「確定申告」など、医師ならではの注意点が数多くあります。
知らずに始めてしまうと、懲戒処分や追徴課税といったトラブルにつながりかねません。
本記事では、医師専門の転職エージェントであるS&Cドクターズキャリアが、法律・厚生労働省資料などの一次情報に基づいて、医師の副業のルールとおすすめの副業ランキング、税金の知識までを徹底解説します。
医師は副業しても問題ない?【結論:原則可能】
結論から言えば、医師の副業は法律上、原則として可能です。
医師法や医療法に「医師は副業をしてはならない」という規定は存在しません。
実際、大学病院の医師が関連病院で外勤(アルバイト)を行う慣行は古くからあり、他院での非常勤勤務や当直バイトは、広い意味での「副業」として一般的に行われてきました。
ただし、「誰でも・無条件で」できるわけではありません。
副業の可否を分けるのは、法律ではなく主に「立場」と「勤務先の就業規則」です。
副業が禁止・制限される3つのケース

| ケース | 根拠 | 内容 |
| 初期研修医 | 医師法(臨床研修専念義務)・厚生労働省「医師臨床研修に関するQ&A」 | 臨床研修に専念する義務があり、研修期間中のアルバイト診療は認められない |
| 公務員医師 | 国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条 | 営利企業への従事等が制限され、原則禁止または許可制 |
| 就業規則で禁止されている勤務医 | 勤務先の就業規則 | 「副業禁止」「許可制」「届出制」の規定に従う必要がある |
厚生労働省の「医師臨床研修に関するQ&A(研修医編)」では、研修期間中のアルバイト診療は認められないことが明示されています。また、県立病院・市立病院など自治体が運営する病院に勤務する医師は地方公務員に該当するため、地方公務員法第38条により、任命権者の許可なく営利企業に従事することはできません。
医師の副業はどこまで許される?
「どこまで許されるのか」という問いに対する法律上の一律の線引きはありません。
実務上は、次の3つの条件をすべて満たす範囲が「許される副業」と考えるとよいでしょう。
- 勤務先の就業規則に違反しないこと(禁止規定がない、または許可・届出を済ませている)
- 時間外・休日労働の上限規制を超えないこと(副業先の労働時間と通算される。詳細は後述)
- 本業に支障をきたさないこと(過労による医療安全上のリスク、守秘義務・利益相反への配慮を含む)
特に1つ目の就業規則は最優先の確認事項です。民間医局の調査では、勤務先でアルバイト以外の副業が「認められている」と回答した勤務医は約半数(49%)にとどまり、「認められていない」が17%、「特に規定はない」が34%でした。「周りもやっているから大丈夫」という慣例ベースの判断は避け、必ず書面上の規定を確認しましょう。
あわせて読みたい: 医師が「辞めたい」と感じる5つの理由|医師を辞めずに解決する方法
医師の副業の実態|約8割の医師に副業経験

医師の副業はどのくらい行われているのでしょうか。
民間医局(メディカル・プリンシプル社)が2023年に実施したアンケート調査(回答者2,288名)から、実態を見てみましょう。
副業をしている医師の割合
| 状況 | 割合 |
| 現在副業をしている | 64% |
| 過去にしていたが現在はしていない | 15% |
| 現在も過去もしたことがない | 21% |
出典:民間医局コネクト「副業アンケート」(2023年9月28日〜10月4日実施、回答者2,288名)
現在副業をしている医師は64%、経験者を合わせると約80%に達します。
年代別では50〜60代で「現在副業をしている」が70%を超えており、キャリアを重ねるほど副業をする医師が増える傾向があります。
副業の内容と収入
経験した副業の内容は「非常勤勤務(定期・不定期含む)」が圧倒的な1位で、副業経験者の90%以上が経験しています。
次いで「株や投資信託など金融商品の投資」「講演やセミナー講師」が続き、医師の資格・経験を活かした副業が中心であることがわかります。
副業による年間収入は、100万円以上が69%、300万円以上が44%、500万円以上が25%を占め、約1割(8%)は副業だけで年間1,000万円以上を得ています。
副業収入の平均額は男性約447万円、女性約315万円でした。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」に基づく医師の平均年収は約1,512万円ですが、副業を組み合わせることで、実際の収入はこれを数百万円単位で上回る医師が相当数いるということです。
あわせて読みたい: 勤務医の年収中央値はいくら?平均との違いを公的データで解説/医師の年収ランキング|診療科・年代・地域別データ徹底比較
医師が副業をする理由
同調査で副業の目的として最も多かったのは「生活資金」で、「自分が自由に使える資金」「子どもの教育資金」「医師をリタイアした後を見据えて」が続きます。
また、収入以外の効果として約4割の医師が「精神的な余裕が生まれる」と回答しており、副業には収入補完だけでなく、キャリアの選択肢を広げ、心理的な安定をもたらす側面もあります。
医師の働き方改革と副業|時間外労働の上限と「労働時間の通算」

2024年4月に施行された「医師の働き方改革」は、副業を考えるうえで避けて通れない制度です。
時間外・休日労働の上限規制
診療に従事する勤務医には、時間外・休日労働の上限規制が適用されます。
| 水準 | 対象 | 時間外・休日労働の上限(年) |
| A水準 | すべての勤務医(原則) | 960時間 |
| B水準・連携B水準 | 地域医療の確保に必要な医療機関(都道府県指定) | 1,860時間 |
| C-1・C-2水準 | 研修医・専攻医、高度技能の修得を目指す医師(都道府県指定) | 1,860時間 |
出典:厚生労働省「医師の働き方改革の制度について」
副業先の労働時間は本業と「通算」される|どこから時間外労働になるか
ここで重要なのが、労働時間は事業場が異なっても通算して管理されるという点です(労働基準法第38条)。
注意したいのは、A水準の「960時間」は総労働時間ではなく、時間外・休日労働時間の上限だということです。
労働時間は本業と副業先を通算したうえで、法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えた部分が時間外労働として扱われます。
副業先での勤務がそのまますべて時間外労働になるわけではなく、あくまで通算後に法定枠を超えた分が対象です。
ただし、通算は労働契約を締結した順に行われ、法定労働時間を超える部分は、後から契約を結んだ使用者(=副業先)の時間外労働として扱われます(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」12頁)。
本業でフルタイム勤務している医師は法定枠を本業で使い切っているため、結果として副業先の労働時間はほぼ全部が時間外労働に計上されることになります。
たとえば週20時間の副業を1年間続ければ、単純計算で年間約1,000時間となり、本業の残業がゼロでもA水準の上限960時間を超えてしまう計算です。
一方、本業が週4日勤務や時短勤務で法定枠に余裕がある場合は、副業時間のすべてが時間外労働になるわけではありません。
また、雇用契約によらない副業は、そもそも通算の対象になりません。
同ガイドラインは通算されない働き方として、フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事などを挙げています(同9頁)。
執筆・監修・講演を業務委託で受ける場合はこれに当たります。
同じ「副業」でも、雇用されて働くのか、業務委託で受けるのかによって、労働時間管理上の扱いは大きく異なります。
副業を始める際は、①自分が適用を受ける水準、②本業の時間外・休日労働の実績、③副業に充てられる残り時間、の3点を把握したうえで無理のない設計をする必要があります。
上限を超えた場合、罰則の対象となるのは医療機関側ですが、結果として副業の継続が困難になったり、勤務先との関係が悪化したりするリスクがあります。
なお、副業先が労働基準監督署から宿日直許可(断続的な宿直・日直勤務の許可)を受けている場合、許可を受けた宿日直に従事する時間は、上限規制の対象となる時間外・休日労働時間には算入されません。
ただし、宿日直中に急患対応など通常の診療業務が発生した場合、その時間は労働時間として扱われます。
当直バイトを選ぶ際は、宿日直許可の有無だけでなく、実際の業務密度も確認しましょう。
医師におすすめの副業ランキング【医師免許を活かす5選】

ここからは、医師の資格・経験を活かせる副業を、収入水準・始めやすさ・本業との両立しやすさの観点からランキング形式で紹介します。
なお、1〜4位はいずれも非常勤(他院・企業に雇用されて働く形)です。
非常勤には、週1回など固定で入る「定期非常勤」と、空いた日に単発で入る「スポット」の2つの勤務形態があり、同じ業務でもどちらを選ぶかで収入の安定性と自由度が変わります。
5〜7位は雇用によらない業務委託型で、労働時間の通算の対象外となる点が大きな違いです。
医師の副業の報酬相場一覧
| 副業の種類 | 勤務形態 | 報酬の目安 |
| 非常勤(外来・病棟管理・訪問診療・当直・健診・産業医など) | 定期(週1回〜の固定)/スポット(単発) | 定期は時給1万円〜1万2,000円程度、スポットは日給5万〜10万円程度 |
| オンライン診療・健康相談 | 在宅・時間単位 | 案件により幅が大きい(保険診療か自由診療かでも異なる) |
| 記事執筆・監修 | 在宅・案件単位 | 分量・専門性により変動 |
| 講演・セミナー講師 | 単発 | 1回数万円〜(専門性・知名度による) |
| 医療コンサル・企業アドバイザー | スポット相談〜月額顧問 | 契約形態により大きく変動 |
※産業医は嘱託(月額報酬型)と専属(常勤契約)で報酬体系が全く異なります。上記は目安であり、地域・診療科・案件内容により変動します。なお、嘱託産業医とオンライン診療は、契約が雇用契約の場合と業務委託契約の場合があり、労働時間の通算の要否や確定申告時の所得区分が変わります。契約書でご確認ください。非常勤・アルバイトの相場は「医師の年収ランキング」内の「アルバイト医師の時給・日給相場」もご参照ください。
1位:非常勤バイト(外来・病棟管理・訪問診療・当直・健診・産業医など)
医師の副業の王道が、他院・企業での非常勤勤務です。
民間医局の調査でも、副業経験者の90%以上が経験しています。
業務内容は外来、病棟管理、訪問診療、当直、健診・人間ドック、産業医業務まで幅広く、勤務形態は大きく2つに分かれます。
- 定期非常勤:週1回・半日など固定のシフトで勤務。時給相場は1万円〜1万2,000円程度で、週1回半日の勤務でも年間200万〜300万円程度の収入増が見込めます。毎月の収入が読みやすく、本業と異なる症例・環境に触れられるため、スキル維持・向上にも有効です
- スポット:単発で入る勤務。日給5万〜10万円程度が相場で、空いた日程だけ働ける自由度が魅力です。長期休暇や学会シーズンの前後だけ集中的に稼ぐ、といった使い方ができます
どの業務を選ぶかで負担と報酬のバランスは大きく変わります。
救急対応のある当直は高報酬ですが負担が大きく、逆に健診や産業医は緊急対応がほぼなく、育児中の医師やベテラン医師にも人気があります。
当直を選ぶ際は宿日直許可の有無と実際の業務密度を、産業医は労働安全衛生法上の要件(日本医師会の産業医学基礎研修の修了など)を確認しましょう。
将来の転職や開業を見据えたネットワークづくりにも役立つ、最も手堅い副業です。
2位:オンライン診療・オンライン健康相談
スマートフォンやPCを使って自宅から診療・健康相談を行う副業です。
移動が不要で、1コマ数時間から働ける案件が多く、時間の融通が利きます。
保険診療のオンライン診療のほか、AGA・美容などの自由診療、健康相談プラットフォームなど案件は多様化しており、需要は拡大傾向にあります。
育児・介護と両立したい医師や、体力的な負担を抑えたい医師に向いています。
3位:医療記事の執筆・監修
医療メディアや製薬企業のコンテンツの執筆・監修です。
パソコン1台で完結し、完全在宅・時間自由で取り組めます。
特に「医師監修」のニーズは高く、専門分野の監修実績が積み上がると、指名での依頼や継続案件につながります。
自身の専門性を社会に発信する手段としても有効で、報酬以上のブランディング効果が期待できる副業です。
4位:講演・セミナー講師
製薬企業の講演会、市民公開講座、企業の健康セミナーなどの講師業です。
報酬は1回数万〜数十万円と高単価ですが、依頼は専門性や知名度に左右されるため、学会活動や発信実績のある医師向きです。
同じテーマで複数回登壇できれば、準備の負担を抑えながら効率よく収入を得られます。
5位:医療コンサル・企業アドバイザー
ヘルスケア企業・医療系スタートアップへのコンサルティングや顧問就任です。
臨床現場の知見はヘルスケアビジネスにおいて希少価値が高く、スポット相談から月額顧問契約まで形態はさまざまです。
報酬の幅は大きいものの、臨床以外のキャリアの可能性を広げたい医師には魅力的な選択肢です。
在宅でできる医師の副業
「移動時間をかけずに、自宅で完結する副業がしたい」という医師には、前述のランキングの中でも次の副業が適しています。
- オンライン診療・健康相談:自宅から診療。時給換算の効率がよい
- 記事執筆・監修:完全在宅。スキマ時間で対応可能
- 医療翻訳・メディカルライティング:医学論文や治験関連文書の翻訳・作成。語学力があれば高単価
- 遠隔画像診断:放射線科医なら自宅での読影業務も選択肢
在宅系の副業は身体的負担が軽い一方、診療系のアルバイトに比べると単価が低い案件もあります。
「収入重視なら非常勤・スポット」「時間と場所の自由重視なら在宅系」と、目的に応じて使い分けるのが現実的です。
医師免許を使わない副業(投資・不動産・起業など)
医師免許に紐づかない副業もあります。
株式投資・NISAなどの資産運用
株式や投資信託への投資は、一般に就業規則の「副業」規定の対象外とされる資産運用です(公務員でも原則可能)。
民間医局の調査でも、副業経験者の約3人に1人が金融商品への投資を挙げています。
ただし、投資は元本割れのリスクを伴い、勤務先の関連企業への投資は利益相反に注意が必要です。
不動産投資
家賃収入を得る不動産投資も、一定規模までは資産運用として扱われるのが一般的です。
高収入で融資審査に通りやすい医師は不動産会社からの営業を受けやすい職業でもあります。
節税効果ばかりを強調する提案には慎重になり、収支シミュレーションを自分で検証したうえで判断しましょう。
ブログ・YouTube・SNSでの発信
広告収入やアフィリエイト収入が発生すれば副業に該当します。
医師の肩書で発信する場合は、医療広告ガイドラインや情報の正確性、勤務先の評判への影響にも配慮が必要です。
起業・法人設立
医療系サービスの起業や、開業(クリニック経営)も広義の副業・兼業です。
ただし民間医局の調査では、起業に対しては「したくない」という回答が多数派であり、副業とは異なりリスク許容度と準備が問われる選択肢といえます。
なお、これらの副業も「就業規則の確認が必要」という点は診療系の副業と同じです。
資産運用を除き、収益事業は副業規定の対象になり得ると考えておきましょう。
立場別|公務員・独立行政法人・大学病院・研修医の副業可否
同じ医師でも、所属によって副業のルールは大きく異なります。
公務員医師(県立・市立病院など):原則禁止
国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条により、公務員は営利企業への従事等が制限されています。
県立病院・市立病院・保健所などに勤務する医師は、任命権者の許可がない限り原則として副業できません。
ただし、公益的な講演や執筆などは許可を得て認められるケースがあります。
所属の人事担当部署に必ず確認しましょう。
独立行政法人(国立病院機構など):法人の兼業規程による
国立病院機構などの独立行政法人(非公務員型)の職員は公務員ではないため、国家公務員法の兼業制限は直接適用されません。
ただし、各法人の就業規則・兼業規程で許可制・届出制とされているのが一般的です。
なお、これらの法人の役職員には、刑法の贈収賄罪などの罰則適用について公務員とみなす「みなし公務員」規定が置かれていますが、これはあくまで罰則の適用に関するものであり、副業の可否を直接定めるものではありません。
「みなし公務員だから副業禁止」と誤解されがちですが、実際の可否は各法人の規程で決まります。
いずれにせよ、所属法人の規程確認と所定の手続きが必須です。
大学病院の医師:勤務先の規程・医局の慣行による
国立大学病院の医師は国立大学法人の職員であり、兼業は各法人の規程に基づく許可制が一般的です。
私立大学病院も就業規則によります。大学病院では、医局の関連病院への外勤が制度として組み込まれていることが多く、「医局を通さないアルバイト」を制限している場合もあるため、外勤ルールは医局・病院の双方で確認が必要です。
初期研修医:アルバイト診療は禁止
初期研修医は医師法上の臨床研修専念義務があり、厚生労働省の「医師臨床研修に関するQ&A(研修医編)」でも、研修期間中のアルバイト診療は認められないとされています。
専攻医(後期研修医)になればアルバイトは可能になりますが、C-1水準など労働時間の管理は引き続き重要です。
開業医:自院の規程次第で自由度が高い
開業医は雇用されている立場ではないため、副業の制約は基本的にありません。
開業当初のキャッシュフロー安定のために他院で非常勤勤務をしたり、経営が軌道に乗ってから産業医や講演で活動の幅を広げたりするケースが多く見られます。
医師の副業はバレる?住民税の仕組みと正しい対処法
「副業をしたら勤務先にバレるのか」は、多くの医師が気にするポイントです。
結論として、無断の副業は住民税を通じて発覚する可能性が十分にあります。
バレる主なルート

- 住民税の通知:副業収入を含めた住民税額は、特別徴収(給与天引き)の場合、勤務先に通知されます。給与額に対して住民税が不自然に高ければ、経理担当者が気づく可能性があります。
- 無申告による税務署からの指摘:確定申告を怠ると、税務調査や指摘を通じて発覚し、追徴課税のリスクも加わります。
- 人づての情報・SNS:医療業界は狭く、非常勤先で同門の医師に会うことは珍しくありません。
「バレない方法」を探すより、許可を取るのが最善
住民税を普通徴収(自分で納付)に切り替えることで通知を避けられる場合がありますが、自治体の運用によっては確実ではありません。
何より、就業規則違反の副業が発覚した場合、始末書・減給・懲戒処分などの対象となる可能性があり、医師としての信用を損なうリスクは収入に見合いません。
現在は副業を許可制・届出制で認める医療機関が増えています。
就業規則を確認し、必要な手続きを踏んで堂々と副業をする。
それが難しい職場であれば、副業に寛容な職場への転職や、非常勤を組み合わせた働き方の再設計を検討するのが、長期的に見て最も合理的な選択です。
あわせて読みたい: 医師の転職に最適な時期はいつ?成功するスケジュールと準備のポイント
医師の副業の税金と確定申告|20万円ルール・経費・個人事業主
副業を始めたら、税金の知識は必須です。
医師の副業で確定申告が必要になる3つのケース
給与所得者の確定申告のルールを医師の副業に当てはめると、主に次の3つのケースで確定申告が必要になります。
| ケース | 判定基準 |
| ① 給与の年間収入が2,000万円を超える | 副業の有無にかかわらず確定申告が必要(年末調整の対象外となるため) |
| ② 非常勤・アルバイトなど2か所以上から給与を受けている | 年末調整されなかった給与の「収入金額」と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合 |
| ③ 給与は1か所のみで、執筆・監修など給与以外の副業収入がある | 給与所得・退職所得以外の「所得」(収入から経費を引いた額)の合計が20万円を超える場合 |
外勤・アルバイトをしている医師の多くは②に該当します。
②では、非常勤先の給与について経費を引いた「所得」ではなく「収入金額」で判定される点に注意してください。
また、勤務医でも給与収入が2,000万円を超える場合は①に該当し、副業がなくても確定申告が必要です。
なお、いわゆる「20万円ルール」は所得税の確定申告に関するもので、住民税には適用されません。
所得税の確定申告をした場合は、その提出日に住民税の申告書が提出されたものとみなされるため、別途の申告は不要です(地方税法第317条の3第1項)。
一方、副業の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合は、別途お住まいの市区町村へ住民税の申告が必要になります。
副業収入の所得区分
| 副業の内容 | 所得区分 |
| 非常勤勤務・スポットアルバイト | 給与所得 |
| 原稿料・監修料・講演料 | 雑所得(規模により事業所得) |
| 株式の配当 | 配当所得 |
| 不動産の賃貸収入 | 不動産所得 |
経費と個人事業主・青色申告
執筆・監修・講演などの報酬(雑所得・事業所得)では、業務に要した費用を経費として差し引けます。
書籍代・学会参加費(副業に関連するもの)・PC購入費・通信費の按分などが代表例です。
副業が継続的・事業的な規模になれば、開業届を提出して個人事業主となり、青色申告(最大65万円の青色申告特別控除)を選択することで節税効果が高まります。
ただし、非常勤勤務のような給与所得は事業所得にできないため、「外勤中心の副業」では個人事業主化のメリットは限定的です。
執筆・コンサルなど事業性のある副業の割合が大きい医師は、税理士への相談も検討するとよいでしょう。
無申告や過少申告には、延滞税・過少申告加算税などの追徴課税が課される可能性があります。
e-Taxや会計アプリを活用すれば手続きの負担は大きく減らせるため、初年度から正しく申告する習慣をつけましょう。
副業を始める前のチェックリスト

最後に、副業を始める前に確認すべきポイントを整理します。
- 就業規則の確認:副業の禁止・許可制・届出制の別。必要なら人事に確認し、許可を取得する
- 自分の適用水準の確認:A・B・C水準のどれか。本業の時間外労働の現状を把握する
- 労働時間の通算管理:副業を含めた時間外・休日労働が上限を超えない設計にする。勤務記録をつける
- 健康・本業への影響:睡眠時間を削る副業は医療安全に直結する。無理のないコマ数から始める
- 守秘義務・利益相反:患者情報の取り扱い、勤務先と競合する副業でないかの確認
- 税金の準備:収入・経費の記録、確定申告のスケジュール確認
そのうえで副業を探す方法は、①医師専門の求人サイト・エージェントに登録する、②医局・知人の紹介、③企業・メディアへの直接応募、の3つが代表的です。
条件交渉や勤務時間の調整まで代行してもらえるという点では、エージェントの活用が最も手間が少なく、好条件を引き出しやすい方法です。
あわせて読みたい: 医師転職でおすすめのエージェント比較|失敗しない選び方
副業・兼業を含めた働き方の見直しを実現した実例【S&C実例】
S&Cドクターズキャリアは転職支援だけでなく、非常勤・兼業を含めた「収入と働き方の再設計」を支援しています。
実例を3つ紹介します。
【実例1】40代後半・男性・泌尿器科医「収入倍増」を実現
状況:高校生2人・大学生1人の子がいずれも医学部を目指しており、教育資金のため収入を増やしたい。自由診療は避けたい。体力には自信あり。
S&Cの提案と結果:インセンティブ還元が多く症例も多い訪問診療クリニックを提案。わずか1年で院長に抜擢され、3年でのれん分け。年収は2倍以上になった。
「訪問診療は当初は全く考えていませんでした。ステップアップが見込める求人を紹介していただき本当に感謝しています」
【実例2】30代半ば・女性・循環器内科医「産業医との兼業を時短常勤で実現」
状況:非常勤の掛け持ちは収入も立場も不安定。時短で育児と両立できる常勤先を見つけたい。産業医の仕事も続けたい。
S&Cの提案と結果:健診・外来中心のクリニックの求人をコーディネート。先方がちょうど産業医機能を強化したいタイミングで、交渉により時短勤務を獲得。常勤の安定と産業医との兼業を両立できた。
「希望を全部叶えてくれる、頼れるエージェントです。求人提案もレスポンスもずば抜けています」
【実例3】40代半ば・男性・消化器内科医「内視鏡スキルを最高値に評価」
状況:親の介護で当直が難しく、休みも増えて今の病院に居づらい。得意の内視鏡を活かし、日勤帯に集中して働いて収入を確保したい。
S&Cの提案と結果:消化器専門のクリニックを提案。他の医師より1割多めの内視鏡対応を業務に組み込む設計により、勤務日数が1日減りながら収入増を実現した。
「自分の得意分野を最大限評価いただけるよう交渉してくれた。ありがたい」
副業で収入を補うだけでなく、「本業の条件そのものを見直す」ことで、労働時間を増やさずに収入を上げられるケースは少なくありません。
副業と転職・条件交渉は、収入アップの両輪として検討する価値があります。
よくある質問(FAQ)
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Q1. 医師は副業禁止ですか?
A. いいえ、法律上、医師の副業は原則可能です。
ただし、初期研修医(臨床研修専念義務)と公務員医師(国家公務員法・地方公務員法)は原則禁止で、それ以外の勤務医も勤務先の就業規則に従う必要があります。
Q2. 医師の副業はどこまで許されますか?
A. 「就業規則に違反しない」「時間外・休日労働の上限(A水準960時間等)を副業と通算して超えない」「本業に支障をきたさない」の3条件を満たす範囲が目安です。
Q3. 医師におすすめの副業は?
A. 王道は非常勤バイト(定期・スポット)です。同じ非常勤でも、収入重視なら外来・当直、負担を抑えたいなら健診・産業医と選び分けられます。
在宅ならオンライン診療や記事執筆・監修が向いています。
Q4. 公務員の医師は副業できますか?
A. 原則できません。
地方公務員法第38条・国家公務員法第103条・第104条により制限されており、例外的に任命権者の許可を得て認められる場合があります。
国立病院機構などの独立行政法人は法人の規程による許可制が一般的です。
Q5. 研修医は副業できますか?
A. 初期研修医のアルバイト診療は、臨床研修専念義務により認められません(厚生労働省Q&A)。
専攻医以降は勤務先の規定の範囲で可能です。
Q6. 副業したら勤務先にバレますか?
A. 住民税の特別徴収額などから発覚する可能性があります。
無断副業は懲戒リスクがあるため、就業規則を確認し、許可・届出のうえで行うことを強くおすすめします。
Q7. 副業収入の確定申告はいくらから必要ですか?
A. ①給与収入が2,000万円を超える、②2か所以上から給与を受けていて年末調整されなかった給与の収入金額とその他の所得の合計が20万円を超える、③給与以外の所得が20万円を超える——のいずれかに該当すれば所得税の確定申告が必要です。
外勤する医師の多くは②に該当します。
なお、20万円以下で所得税の確定申告をしない場合は、住民税の申告が別途必要です。
Q8. 副業で個人事業主になれますか?
A. 執筆・監修・コンサルなど事業性のある副業なら開業届を出して個人事業主となり、青色申告による節税が可能です。
ただし非常勤勤務の給与は事業所得にできないため、外勤中心の場合はメリットが限定的です。
Q9. YouTubeやブログは副業になりますか?
A. 広告収入などの収益が発生すれば副業に該当します。
医師の肩書で発信する場合は、情報の正確性と勤務先の規定・評判への配慮が必要です。
Q10. 働き方改革で副業はしにくくなりますか?
A. 副業先の労働時間は本業と通算され、通算して法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた部分が時間外労働となります。
本業でフルタイム勤務している場合は法定枠の大半を本業で使うため、副業先の労働時間の多くが時間外労働として計上されやすく、本業の時間外労働が多い医師ほど副業に充てられる時間は限られます。
一方、許可を受けた宿日直(従事する時間は上限規制の対象に算入されない)や、雇用によらない執筆・監修(業務委託)、資産運用などは影響を受けにくいといえます。
まとめ:ルールを押さえれば、副業は医師のキャリアの強力な武器になる
本記事の重要ポイントをまとめます。
・医師の副業は法律上原則可能。ただし初期研修医・公務員医師は原則禁止
・副業の可否を最初に確認すべきは勤務先の就業規則
・約8割の医師に副業経験があり、非常勤勤務が最多。約1割は副業だけで年1,000万円以上
・働き方改革により副業先の労働時間も本業と通算され、通算後に法定労働時間を超えた部分が時間外労働となる。フルタイム勤務医ほど副業時間が時間外労働に計上されやすく、上限(A水準960時間等)に注意。業務委託による副業は通算の対象外
・王道は非常勤バイト。収入重視なら外来・当直、負担を抑えるなら健診・産業医、在宅系という選択肢もある
・確定申告が必要なのは、①給与収入が2,000万円超、②2か所以上から給与を受け、年末調整されなかった給与の収入金額と給与・退職所得以外の所得の合計が20万円超、③給与は1か所で、給与・退職所得以外の所得が20万円超——のいずれかに該当する場合。②は「所得」ではなく「収入金額」で判定される点に注意 。20万円以下で所得税の確定申告をしない場合も、住民税の申告は別途必要
・「バレない方法」ではなく、許可を得て堂々と行うのが最善
そして、収入を増やす手段は副業だけではありません。
本業の条件交渉や、副業と両立しやすい職場への転職によって、労働時間を増やさずに収入を上げるという選択肢もあります。
「今の職場は副業禁止だが収入を増やしたい」「非常勤を組み合わせた働き方を設計したい」という先生は、ぜひ一度S&Cドクターズキャリアにご相談ください。
S&Cドクターズキャリアについて
S&Cドクターズキャリアは、医師専門の転職・採用支援会社です。
単なる求人紹介にとどまらず、医師の皆様には今後のキャリアのためのベストの提案を、医療機関様には採用・経営課題の速やかな解決を提供します。
業界経験5年以上のトップレベルのコンサルタントのみが在籍し、求人票に載らない条件交渉・非公開ポジションの獲得・キャリア戦略の伴走を強みとしています。
副業との両立を前提とした勤務条件の設計や、非常勤先の紹介・交渉もお任せください。転職支援サービスは完全無料でご利用いただけます。
この記事の監修者
渡邊 崇(わたなべ・たかし) 株式会社S&C 代表取締役/S&Cドクターズキャリア 代表コンサルタント
国内大手メディア(報道)、大手不動産(経営企画・営業)、外資系メディア(報道・イベント主催)を経て、大手総合人材会社で医師・看護師紹介事業の営業責任者を務める。2016年より医師紹介事業に特化し、取締役・専務取締役を歴任。2019年より現職。これまで医師の転職・非常勤支援を1,000人以上、採用を支援した医療機関は1,000施設以上に上る。医師専門エージェントとして、求人票に載らない条件交渉・非公開ポジションの獲得・キャリア戦略の伴走を強みとする。
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本文の各章に、テーマ別の詳しい解説記事へのリンクを設置しています。あわせてご活用ください。
出典
- 厚生労働省「医師の働き方改革の制度について」(医師の時間外・休日労働の上限規制、A・B・C水準、副業・兼業先との労働時間通算)https://c2-shinsasoshiki.mhlw.go.jp/system/
- 厚生労働省「医師臨床研修に関するQ&A(研修医編)」(研修期間中のアルバイト診療の禁止)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/qa/kenshui.html
- e-Gov法令検索「国家公務員法」第103条・第104条、「地方公務員法」第38条(公務員の兼業制限)、「労働基準法」第38条(事業場を異にする場合の労働時間の通算)https://laws.e-gov.go.jp/
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(副業・兼業時の労働時間管理)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
- 国税庁タックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(副業所得20万円超の確定申告義務)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 民間医局コネクト「副業経験のある医師は80%、約10%は副業だけで年間1,000万円以上稼ぐ〜副業アンケート〜」(2023年9月28日〜10月4日実施、回答者2,288名)https://connect.doctor-agent.com/research/research-25/
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別第1表 医師(企業規模計10人以上)(e-Stat 政府統計総合窓口)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429 /医師の年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出(男女計 約1,512万円)
- 厚生労働省 基発0701第8号「医師、看護師等の宿日直許可基準について」(令和元年7月1日)(宿日直許可の要件、宿日直中に通常業務が発生した場合の取り扱い)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6286&dataType=1&pageNo=1
※本記事内の転職事例は、S&Cドクターズキャリアの支援実績に基づくものです。個人が特定される情報は伏せて掲載しています。年収・報酬相場の記述は、調査時点・調査方法により差があるため、参考値としてご覧ください。公的統計・公的資料は2026年7月時点で各公式サイトを参照しています。