「こんなはずじゃなかった」
「前の職場の方が、まだマシだった」
私たち「S&Cドクターズキャリア」には、転職後に悩みや葛藤を抱えた医師の方々から、日々多くのご相談が寄せられています。
これまでに2000名以上の先生方のリアルな声を聴いてきました。
人間関係、勤務条件、年収、これをやりたい。
どこかに期待を抱いて選んだはずの職場で、むしろ前より苦しくなる。
そんなケースが、現実には多く存在します。
この記事では、医師が転職で後悔しがちな5つの典型パターンと、「最初から完璧を求めなくても、後悔しない選択をする方法」をお伝えします。
医師が転職で後悔する5つの典型的な理由

医師の転職における後悔は、特定のパターンに集約されます。転職経験者の声を分析すると、以下の5つの理由が特に多く挙げられています。
- 人間関係・職場環境が想像していたものと違った
- 勤務条件が事前の説明と異なっていた
- 年収・手当が聞いていた金額ではなかった
- スキルアップできる環境ではなかった
- 知人の紹介で転職したため辞めにくくなった
後悔する理由を知っておくことで、転職の成功につなげることができます。
【1位】人間関係・職場環境が想像していたものと違った
転職後悔の最大の要因は、人間関係のミスマッチです。
医療現場では医師同士の連携はもちろん、看護師や医療技師、事務スタッフとの協力が不可欠です。
しかし、実際に働き始めてから以下のような問題に直面するケースが多発しています。
- 上司や院長からのパワーハラスメント
- 医局内の派閥争いや上下関係の厳しさ
- 他科の医師との連携不備や越権行為
- 休憩時間や非番日でも業務連絡が頻繁にある
また、実際に勤務を始めると、現場の看護師や医療スタッフと、上層部との関係性の悪さや、医師との関係性の悪さで組織が乱れている場合があります。
その為、求人票の確認と採用責任者との面接だけでなく、院内見学で現場スタッフとも話しをする機会を設け、文面だけでは把握できない現場の雰囲気をつかむことが重要です。
見学のアレンジは私たちにお任せ下さい。
【2位】勤務条件が事前の説明と異なっていた
口約束や曖昧な説明による勤務条件の食い違いが起こり、事前説明と異なっている時があります。
転職時の面接や説明で聞いていた内容と、実際の勤務内容が大きく異なるケースが頻発しています。
- 「当直は月数回」と聞いていたが、実際は月10回以上
- 外来のコマ数や担当患者数などが、入職後に激増
- 入職時に説明されていなかった業務が無償で次々追加される
- 「困った時はお互い様」という言葉を理由に業務量が際限なく増加
- 住民への講演会や学会出席が強制的に組み込まれる
環境の変化により業務量が一時的に増えることはあり得ますが、著しく増加し、かつ職場に訴えても改善の見込みが見られないようでしたら、私たちに気軽に相談してください。
【3位】給与・手当が聞いていた金額ではなかった
給与・手当に関する説明不足や誤解が転職後の大きな不満につながっています。
医師の給与体系は複雑で、基本給に加えて各種手当の構成を正確に理解していないと、実際の収入が期待を大きく下回る結果となります。
- 年俸に当直料が含まれていることが後から判明
- 固定残業報酬
- オーナー理事長の判断で給与が一方的に減額される
- 管理医師は理事なので有給は発生しないと後から言われた
給与の内訳や支給条件について、事前に詳細な確認を怠ったことで、転職後に経済的な不利益を被るケースも多発しています。
【4位】スキルアップできる環境ではなかった
キャリアアップを目指した転職が、期待とは正反対の結果となるケースも珍しくありません。
専門性向上や新たなスキル習得を目的として転職したにも関わらず、実際には目指していた業務に従事できない状況に陥る医師が増えています。
- 希望する専門分野の症例数が極端に少ない
- 指導体制が不十分で体系的な学習ができない
- 目指していた業務とは異なる分野を担当させられる
- 研修や学会参加の機会が制限される
転職前に描いていたキャリアプランが実現できず、医師としての成長が停滞してしまう結果、転職自体を後悔する医師が少なくありません。
自身が望むキャリアが本当に実現できるのか。指導体制や協力体制をよく吟味しましょう。
【5位】知人の紹介で転職したため辞めづらくなった
人間関係を重視した転職方法が、退職の足かせとなるケースが増加しています。
知人や先輩医師からの紹介による転職は信頼性が高いと思われがちですが、実際には様々な問題を抱えることがあります。
- 紹介者の顔を立てるため詳細な条件確認ができない
- 実際の職場環境が期待と異なっても紹介者に遠慮して相談しにくい
- 職場に不満があっても紹介してもらった手前辞めづらい
- 紹介者との関係悪化を恐れて我慢を続けてしまう
- 条件交渉や待遇改善の要求がしにくい
知人の善意による紹介であっても、客観的な情報収集や条件確認を怠ると、結果的に双方にとって不幸な結果を招くことになります。
転職で後悔した医師の3つの失敗事例

S&Cドクターズキャリアの代表コンサルタントの渡邊が、よくある医師転職の失敗パターンを、3つ紹介します。
- 「給与アップ」を狙ったが激務で体調を崩したケース
- 「ワークライフ重視」で年収が大幅ダウンしたケース
- 「人間関係改善」を期待したが状況が悪化したケース
「給与アップ」を狙ったが激務で体調を崩したケース
Aさん(40代・消化器科医)の事例
大学病院勤務の40代男性消化器内科医Aさんは、年収800万円という待遇に不満を感じ、年収2,000万円を提示する訪問診療クリニックへの転職を決意しました。
転職前には、年収が約2.5倍にアップし、17時で退勤で当直もなくなり、大学病院より業務が楽になり、プライベートが確保できることを期待していました。
しかし現実は、毎日のようにオンコール呼び出しがあり、慢性的な睡眠不足で体調を崩し、3カ月で退職してしまいました。
-後悔ポイント-
「高給には必ず理由があることを理解していませんでした。高い年収を提示するのは、一人の医師に過重な負担をかけるからです。結果的に体調を崩し、給与アップどころか医師生命にも影響が出かねない状況でした」
「ワークバランス重視」で年収が大幅ダウンしたケース
Bさん(30代・外科医)の事例
「美容クリニックなら楽かと思ったのに・・・」
激務に疲れ果てたBさんは、これまでの緊急対応や手術中心の働き方から離れ、「ワークライフバランス重視」、「自由診療で高収入も可能」と聞いた美容クリニックに転職しました。
転職前の期待は、定時で帰宅できる軽めの勤務内容と、高収入の両立。
「今より楽になって、収入も下がらなければラッキー」-そんな思いで転職を決断しました。
しかし、転職後の現実は甘くありませんでした。
経験の浅さからノルマ達成が難しく、インセンティブがほとんど出ない。インセンティブの多いオペは上級医にしか回ってきません。
自由診療であるがゆえに患者からの「接客対応」にストレス。土日勤務・シフト制で、むしろ家族との時間が減りました。
結果的に、年収1,800万から1,200万前後にダウン。
平日は定時で帰れるものの、精神的な負荷と不安定な収入に悩む日々となりました。
転職後の現実として、年収が1,200万円から600万円に半減。
-後悔ポイント-
「美容=楽で儲かる、というイメージだけで判断してしまいました。手術経験やスキルが評価される環境と違い「営業力」や「見た目」まで求められる現場に驚きました。結局、ワークライフバランスどころか、自己肯定感まで揺らいでしまいました」
「人間関係改善」を期待したが状況が悪化したケース
Cさん(50代・整形外科医)の事例
医局内の人間関係に疲れたCさんは、「アットホームな職場」を謳う病院への転職を決めました。
転職前の期待は、医局の上下関係から解放され、同僚との協力関係や、人間関係も良好になると考えていました。
しかし、転職後の現実は、院長による独裁的な運営体制であり、理事長から休日でも頻繁に業務連絡がありました
他科医師による越権行為が横行し、看護師との連携が全く取れない状況でした。
-後悔ポイント-
「『アットホーム』という言葉に惑わされました。実際は院長の独裁的な運営で、医局以上に人間関係が複雑でした。転職前に実際の職場環境を確認する手段を持っていれば、このような失敗は防げたはずです」
後悔しない医師転職を実現する6つの重要ポイント

転職で後悔する原因を踏まえ、成功に導くための具体的な6つの対策をご紹介します。
重要なポイント | 結果 |
転職の目的と優先順位を明確に | 転職後のミスマッチを防ぐ |
情報収集 | 安心して働ける病院かどうかが分かる |
見学をする | 雰囲気から人間関係や忙しさが見えてくる |
契約条件は書面に残す | 転職後のトラブルを防ぐ |
複数の病院を比較する | 給与の相場感を知ることができる |
転職のスケジュールの段取り | 転職の段取り |
これらのポイントを押さえることで、転職後の満足度を大幅に向上させることができます。
【ポイント1】転職の目的と優先順位を明確にする
転職活動を始める前に、必ず自己分析を行いましょう。「なぜ転職するのか」「転職で何を実現したいのか」が曖昧なまま活動を進めると、判断基準が定まらず、結果的にミスマッチを招きます。
まず現職の問題点を整理しましょう。給与や待遇面での不満、勤務条件の問題、人間関係のストレス、キャリアアップの機会不足など、具体的に何が不満なのかを明確にします。
次に、転職で実現したいことを具体化します。年収目標、理想的な勤務体系、求めるスキルアップの内容、プライベート時間の確保レベルなどを詳細に描きましょう。
【ポイント2】情報収集を行う
求人票の情報だけでは不十分です。転職で後悔する最大の原因は情報不足にあります。表面的な情報だけでなく、実際の職場の実態を詳しく調べることが重要です。
公式ホームページのチェックだけでなく、患者層や地域での立ち位置、スタッフの在籍年数、設備などを確認しましょう。
【ポイント3】見学で実際の雰囲気を確認する
どんなに詳細な情報を収集しても、実際の職場の雰囲気は現地を訪れなければ分かりません。見学は転職成功のための必須プロセスです。
見学時は、医療機器の充実度や電子カルテシステムの使いやすさなど設備面の確認はもちろん、医師同士のコミュニケーションや看護師・スタッフとの関係性を注意深く観察しましょう。
実際の患者数と忙しさのレベル、医師一人あたりの担当業務量、緊急対応の頻度なども重要なチェックポイントです。
【ポイント4】契約条件は必ず書面で残す
転職後のトラブルの多くは、契約条件の認識齟齬から発生します。どんなに信頼できる相手でも、重要な条件は必ず書面で確認しましょう。
基本的な雇用条件から給与・待遇、福利厚生まで、口約束で済ませてはいけません。特に給与については、基本給と諸手当の内訳、固定残業代の有無、賞与の支給基準など、詳細まで文書化することが重要です。
当直・オンコールの頻度と条件、副業・兼業の可否、転勤の可能性なども、後でトラブルになりやすい項目です。契約書として正式に取り交わすことで、双方の認識を統一できます。
【ポイント5】複数の転職先候補を比較検討する
最初に見つけた求人に飛びつくのは危険です。複数の選択肢を比較することで、給与の相場観を身につけ、より良い条件の求人を見つけることができます。また、条件交渉も有利にできます。
年収・給与体系、勤務条件、職場環境、キャリアアップの可能性、病院の将来性など、重要な項目について候補となる病院を比較しましょう。優先順位に応じて重み付けを行い、総合的に判断することが大切です。
転職エージェントの専門的アドバイスや医師仲間の意見も参考にしながら、客観的な視点で検討を進めましょう。
【ポイント6】転職スケジュールに余裕を持つ
少なくとも2~3カ月の時間をかけて転職活動を行うことをお勧めします。
焦ると判断ミスをして、後悔に繋がるかも知れません。
最初の1~2週間は準備期間として、自己分析と転職理由の明確化、希望条件の整理、必要書類の準備を行います。信頼できる転職エージェントとともに行うと良いでしょう。
次に、情報収集・応募を進め、病院見学や面接を実施します。併願先の面接を待を空けずに行うのがポイントです。
せっかく一方から内定を得ても、もう一方の面接が1カ月後では、内定の期限を過ぎて結局比較検討ができない、という事態に陥ります。
複数のオファーをよく吟味した上で、転職先を決定し、現職での引継ぎを行います。
現職への配慮も忘れてはいけません。退職の意思表示は、内定後速やかにに行い、後任の確保や引継ぎに十分な時間を確保しましょう。
すぐに使える転職前の「チェックリスト」

転職活動を進める際の重要項目は下記3つです。これらを詳細に確認することで、転職後の後悔を防ぐことができます。
- 勤務条件
- 給与・待遇
- 職場環境
これら全てを1人で調べるのは大変ですので、転職エージェントに転職相談をするのがおすすめです。
勤務条件のチェックリスト
- 残業時間
- 当直明けの勤務体制
- オンコールの頻度と業務量
- 有給休暇の取得率
- 連続休暇が取得可能かどうか
勤務時間については、一日の標準的な開始・終了時刻だけでなく、実際の残業時間や当直明けの勤務体制も確認が必要です。有給休暇の取得率や連続休暇の取得可能性も、ワークライフバランスに直結する重要な要素です。
当直・オンコールについては、頻度だけでなく実際の業務量や緊急呼び出しの回数も把握しておきましょう。「月数回」という表現が実際には月10回以上だったという事例もあります。
外来診療のコマ数や入院患者の担当数、手術件数なども、転職後の働き方を左右する重要な要素です。研究活動や学会参加の時間確保についても事前に確認しておくことをお勧めします。
給与・待遇のチェックリスト
- 給与・固定残業制度・諸手当の内訳
- 各種手当の金額と支給条件
- 賞与は過去の支給例
給与については、基本給と諸手当の内訳を詳細に確認しましょう。特に固定残業代制度がある場合、実際の労働時間と見合った設定になっているかをチェックすることが重要です。
当直手当や住宅手当、通勤手当などの各種手当についても、金額だけでなく支給条件を確認しておきましょう。
職場環境のチェックリスト
- 平均年齢
- 平均在籍年数
- 経営方針
- 病院の経営状況
- 将来性
- 患者層
- 設備投資実績
人間関係や組織文化の調査は、転職後の満足度を左右する重要な要素です。医師の平均年齢や離職率、院長の経営方針などを可能な限り調べましょう。
面談先の病院によっては、働く医師との面談機会を設けてもらったり、複数回の病院見学を実施したりすることで、職場の実態をより正確に把握できます。
病院の経営状況や将来性については、患者数の推移や設備投資実績、地域での位置づけなどを調べることで判断できます。
医師が転職で後悔する3つの根本的な原因
前述の失敗事例を分析すると、医師が転職で後悔する根本的な原因は以下の3つに集約されます。
- 転職への焦りで十分な検討をしなかった
- 転職先の情報収集が不十分だった
- 自己分析不足で転職の目的が曖昧だった
いずれも「転職の事前準備や情報収集の不足」が要因になっています。
転職の焦りで判断をミス
現職への不満が強いほど、転職を急ぎすぎる傾向があります。
多くの医師が転職で後悔する最大の原因は、現在の職場環境に対する不満や不安から「一刻も早く転職したい」という心理状態に陥ることです。
×焦りが招く判断ミス
- 最初に見つけた求人に飛びつく
- 複数の選択肢を比較検討しない
- 「今の職場より良ければ何でもいい」という思考
- 転職先の詳細な確認を怠る
- 長期的なキャリアプランを考慮しない
特に、激務や人間関係のストレスが限界に達している医師は、冷静な判断ができない状態で転職活動を進めがちです。
その結果、転職先で新たな問題に直面し、「前の職場の方がまだマシだった」と後悔することになります。
転職先の情報収集が不十分
求人情報だけでは見えない現実があることを理解していなかった。
医師の転職において、求人票や病院のホームページに記載されている情報だけで判断するのは非常に危険です。実際の職場環境は、表面的な情報からは読み取ることができません。
×情報収集不足の具体例
- 求人票だけで判断した。
- 給与の内訳や支給条件を詳しく確認しなかった
- 実際の業務量や勤務体系を把握していなかった
- 職場の人間関係や組織文化を調査しなかった
- 病院の経営状況や将来性を検討しなかった
現在の仕事をしながらだと忙しいため、情報収集は不足しがちです。転職エージェントをうまく活用しましょう。
自己分析不足で転職の目的が曖昧
「なぜ転職するのか」「何を実現したいのか」が明確でないまま転職活動を進めた。
転職で後悔する医師の多くは、転職の目的や優先順位が曖昧なまま活動を開始しています。これにより、転職先選びの判断基準が定まらず、結果的にミスマッチを引き起こします。
自己分析不足の問題点
- 転職で解決したい問題が整理されていない
- 理想の働き方が具体的にイメージできていない
- 妥協できる条件と絶対に譲れない条件が区別できていない
- 5年後、10年後のキャリアプランが描けていない
- 現職の良い点と悪い点が客観的に評価できていない
必要な自己分析項目
自己分析項目
- 転職理由の明確化と優先順位付け
- 理想の勤務条件と働き方の具体化
- 自身のスキルと市場価値の正確な把握
- 期的なキャリアビジョンの設定
- 譲れない条件と妥協可能な条件の整理
医師専門の転職エージェントにご相談を
医師の転職で後悔する最大の原因は、準備不足と情報収集不足にあります。
しかし、仕事をしながら、情報収集を行うのはとても大変なことです。また、転職先の社員との面談や、条件を細かく聞くこと、院内見学など、何度も要請することに遠慮をしてしまう人もいます。
そんな場合は、医療専門の転職エージェントへの相談がおすすめです。
転職エージェントの多くは纏足事例から、転職成功に至るノウハウを体系化しており、面接の調整や条件交渉、契約締結のサポート、その後のフォローまで行います。
信頼のおける転職エージェントの存在は、多忙な先生方にとって強い味方になります。
ただ、「完璧な職場」は存在しません。
現場の空気も、人間関係も、組織の方針も、入ってみないとわからない。そして、入った後に代わることもあります。
それでも、その不確実さを受け入れて「自分によっての正解」をつくろうとする人が、本当にいいキャリアを歩んでいくのだと思います。
だから、もし今の職場に少しでも違和感があるなら、自分の気持ちに耳を傾けてみてください。
まだ転職すると決めてはいなくても、私たちはともにあなたの未来を考えることができます。