近年、医師免許を持ちながら病院やクリニック以外の場所で活躍する医師が増加傾向にあります。
厚生労働省の調査によると、2024年現在、日本国内の医師数は約34万人に達していますが、その中の一般企業等で働いている医師は800人弱と少数派です。
しかし、医師から企業への転職希望者は年々増えており、医師のキャリア選択の幅が広がってきています。
臨床の第一線から離れ、企業で活躍することで「より多くの患者に貢献したい」「医療の構造的な問題解決に取り組みたい」といった新たな目標を持つ医師も増えています。
本記事では、医師の企業転職の現状、選択肢、条件、そして成功のポイントについて詳しく解説します。
目次
医師が臨床現場を離れる理由
医師が臨床現場から離れて企業などへの転職を考える理由は多岐にわたります。
主な理由として以下が挙げられます。
医師が企業転職を検討する8つの理由
| 理由 | 詳細 |
| 理想と現実のギャップ | 医学部入学時に描いていた医師像と実際の医療現場での経験にギャップを感じる |
| ワークライフバランスの問題 | 当直や呼び出しが多く、家族との時間や私生活の確保が難しい |
| 体力的・精神的な負担 | 特に救急医療や外科系では体力的負担が大きく、年齢とともに限界を感じる |
| 人間関係の課題 | 医局や病院内の人間関係、特に大学病院などでの派閥問題 |
| 訴訟リスクへの懸念 | 医療訴訟リスクから解放されたいという思い |
| 経済的な理由 | より高収入が期待できる企業への転職願望 |
| 医局人事への不満 | 大学医局に所属する医師の場合、医局人事による勤務先の決定に対する不満 |
| 経営の難しさ | 開業医の場合、経営面での課題から企業への転職を検討 |
医師免許を活かせる主な企業転職先

医師免許や臨床経験を活かせる企業転職先としては、主に以下のような選択肢があります。
医師免許を活かせる主な7つの転職先
- 製薬会社
- 新薬の研究開発や市場導入、安全性評価などに医学的知見が求められる
- 臨床開発、メディカルアフェアーズ、安全性情報部門での活躍が期待される
- 産業医
- 企業で働く従業員の健康管理や職場環境の改善提案
- ワークライフバランスが良く、安定した収入が魅力
- コンサルティング会社
- 医療や製薬業界に特化したコンサルティングサービスの提供
- 医師としての専門知識を活かした医療機関や製薬企業へのアドバイス
- 公衆衛生医師
- 保健所や地方自治体での公衆衛生業務
- 感染症対策や地域の健康増進活動など
- 医系技官
- 厚生労働省などの行政機関での医療政策立案や実施
- 医師の視点からの政策提言
- 生命保険会社
- 保険加入者の健康状態審査や保険金支払いの医学的判断
- 安定した勤務環境と収入が特徴
- 介護老人保健施設の施設長・勤務医
- 入所者の健康管理や医療ケア、リハビリテーション監督
- 施設全体の運営管理
各職種の詳細と年収相場
企業転職を考える際、各職種の具体的な業務内容や求められるスキル、そして年収相場を把握することは非常に重要です。
臨床現場とは大きく異なる企業での働き方や待遇を理解することで、自分に合った転職先を見極めることができます。
ここでは、医師免許を活かせる主な企業転職先について、実務内容から年収までを詳しく解説します。
製薬会社のメディカルドクター
仕事内容
製薬会社でのメディカルドクターの主な業務は、臨床開発、メディカルアフェアーズ、安全性情報部門の3つの分野に大別されます。
臨床開発では、新薬の開発計画立案や臨床試験の管理を担当し、開発戦略や治験実施計画書の立案において、臨床現場の実態を踏まえた提言を行うことが求められます。
メディカルアフェアーズでは、上市後の製品の価値を最大化するための活動を行い、アンメットメディカルニーズの同定や臨床研究の計画・実施に関わります。
安全性情報部門では、医薬品の副作用情報の収集・分析・評価を行い、適切な安全対策を立案します。
いずれの部門でも、医師としての専門知識と臨床経験を活かしながら、より多くの患者さんに貢献することができます。
求められる経験・スキル
内科系診療科(特に腫瘍内科、免疫疾患関連)での臨床経験(3~5年以上)
英語力(TOEIC 700点以上が目安)
国際学会での発表経験や海外留学経験があれば評価される
臨床研究や治験への参加経験があると有利
コミュニケーション能力
年収相場と待遇
製薬会社のメディカルドクターの年収は約1,500万円~1,800万円程度で、外資系企業ではさらに高額になる場合もあります。
夜勤や当直はなく、基本的に土日は休みで、ワークライフバランスが取りやすいのが特徴です。
また、グローバルでの新薬開発に携わる機会があり、役職によっては海外出張が頻繁にあります。
日常の勤務ではスーツを着用し、社内では「先生」ではなく「さん」「君」と呼ばれるなど、病院とは異なる文化に適応する必要があります。
産業医
仕事内容
産業医は、企業で働く従業員の健康管理や職場環境の改善提案を行います。
具体的な業務としては、定期健康診断の実施とその結果評価、長時間労働者への面談、メンタルヘルス対策、職場巡視による環境改善提案などがあります。
企業の労働者の健康を守る立場から、心身に不調がある労働者がいた場合、その原因を探り対策を考えることも重要な役割です。
産業医には「専属」と「嘱託」の2つの勤務形態があり、専属の場合は契約期間中その企業の産業医として専従し、嘱託の場合は複数の企業と契約することが可能です。
求められる経験・スキル
産業医の資格(労働安全衛生法に基づく研修の修了)
臨床経験(内科系が有利だが、特定の診療科は問われない)
コミュニケーション能力
予防医学の知識
労働安全衛生に関する基本的な知識
年収相場と待遇
専属産業医の場合、年収は約1,110万円~1,300万円程度です。
嘱託産業医の場合は時給制もしくは単価制で、複数の企業を掛け持ちすることで年収を増やすことも可能です。
夜勤や当直がなく、緊急対応も少ないため、ワークライフバランスが取りやすい職種として人気があります。
最大の魅力は、定時勤務で夜間や休日の呼び出しがほとんどないという点です。
公衆衛生医師
仕事内容
公衆衛生医師(保健所等医師)は、保健所や地方自治体で公衆衛生に関わる業務を担当します。
感染症対策、生活習慣病やがんの予防、母子保健、精神保健、難病対策、食品や環境の生活衛生など、多岐にわたる分野で活動します。
地域住民全体の健康レベルの維持・向上のための仕組みやルール・システムづくりを通じて、地域の人々の保健を支える重要な役割を果たしています。
勤務先は、保健所や自治体の本庁(県庁や市役所など)となります。
求められる経験・スキル
臨床経験
公衆衛生学の知識があると有利
社会医学系専門医の取得を目指せる
データ分析能力
地域保健に関する知識
年収相場と待遇
医師免許取得後10年目で約770万円~1,300万円程度とされています。
公務員としての安定した雇用と、各種手当てが付くのが特徴です。
当直はありますが、臨床医ほど負担は大きくありません。
公務員としての福利厚生が充実している点も魅力の一つです。
介護老人保健施設の施設長・勤務医
仕事内容
介護老人保健施設では、在宅復帰を目標とする利用者の健康管理や医療ケア、リハビリテーションの監督を行います。
施設長を兼務する場合は、施設全体の運営管理も担当します。
介護保険法では、入所者100名に対して常勤医師を配置することが定められており、医師は施設の要として重要な役割を果たします。
医学的管理のもとで、多職種と連携しながら利用者の在宅復帰を支援する役割を担っています。
求められる経験・スキル
内科や老年医学の臨床経験
介護保険制度に関する知識
多職種協働のマネジメント能力
認知症ケアの知識
施設長の場合は組織マネジメント能力
年収相場と待遇
年収は約1,200万円~1,400万円程度です。
夜間の緊急対応はありますが、当直は少なめで、比較的規則的な生活が可能です。
施設長を務める場合は、施設の経営状況に応じて報酬が上がる可能性もあります。
医系技官
仕事内容
医系技官は、厚生労働省などの行政機関で、医療政策の立案や実施に関わる仕事です。
地域医療構想の推進、オンライン診療の推進、医師の働き方改革、医療従事者の養成・確保、医師偏在対策、医療安全、医療の国際展開、地域包括ケアシステムの構築など、様々な医療行政の課題に取り組みます。
医師としての専門知識を活かしながら、政策立案というアプローチで国の医療課題解決に貢献する役割を担っています。
求められる経験・スキル
臨床経験(必須ではない)
医療現場の実態理解
論理的思考力
政策立案能力
コミュニケーション能力
年収相場と待遇
医師免許取得後3年目で約540万円、医師免許取得後7年目で約620万円、医師免許取得後11年目で約750万円、医師免許取得後15年目で約810万円程度とされています。
月45時間の超過勤務がある場合は、それぞれ約660万円、約750万円、約910万円、約980万円に増額されます。
また、個人の状況などに応じて、通勤手当や住居手当、扶養手当などの諸手当が別途支給されます。
公務員としての安定した雇用と福利厚生が特徴です。
生命保険会社の診査医
仕事内容
生命保険会社の診査医は、保険加入希望者の健康状態を診査して、保険の加入可否や条件を判断する役割を担います。
また、保険金の支払い請求に対する医学的評価も行います。
診査医には、生命保険会社の職員である「社医」と、生命保険会社から委託を受けて診査を行う「嘱託医」の2つの勤務形態があります。
医学的知見に基づいて保険のリスク評価を行い、適切な判断を下すことが求められます。
求められる経験・スキル
内科系の臨床経験が有利
幅広い疾患に関する知識
保険医学の理解
医学的知見を非医療者に説明する能力
評価・判断力
年収相場と待遇
年収は約1,000万円~1,500万円程度です。
定時勤務で夜勤や当直がなく、週休二日制が一般的で、ワークライフバランスが取りやすいのが特徴です。
大手生命保険会社では福利厚生も充実しており、安定した職場環境で働くことができます。
コンサルティング会社
仕事内容
医療・製薬業界に特化したコンサルティング会社では、医師としての専門知識を活かして、医療機関や製薬企業へのアドバイスを提供します。
病院の経営改善などのテーマはもちろん、製薬会社のマーケティングやセールスの在り方の見直しなど、医療に関する様々な課題解決に取り組みます。
臨床医としての経験や視点が、コンサルティングの現場で非常に価値を持ち、クライアントへの深い洞察を提供することが可能です。
また、医療機関へのインタビュー調査などでも、医師がインタビュアーを務めることで、より本音を引き出しやすいという利点があります。
求められる経験・スキル
臨床経験
分析力・論理的思考力
問題解決能力
プレゼンテーションスキル
コミュニケーション能力
外資系では英語力が必須
年収相場と待遇
年収は約800万円~1,200万円程度です。
外資系の著名なコンサルティング企業では、ジュニアレベルでは臨床医より低く、ミドルレベルで同等程度、シニアレベルではかなり高額になる傾向があります。
ただし、一般的に激務であり、さまざまな業界の第一線で活躍する人々と交流し、切磋琢磨できる環境であることが特徴です。
プロジェクトごとに様々なクライアントや業界に関わるため、幅広い知見を得られることがキャリア形成上の利点となります。
以上のように、医師の企業転職先は多岐にわたり、それぞれの職種によって仕事内容、求められるスキル、年収や待遇が異なります。
自身のキャリア志向や生活スタイルに合わせて、最適な選択をすることが大切です。
企業転職先の年収・待遇比較表
| 職種 | 年収相場 | 勤務時間 | ワークライフバランス | 求められる経験・スキル |
| 製薬会社メディカルドクター | 1,500万円~1,800万円 | 平日日勤のみ | ◎(週休二日制) | 内科系経験、英語力 |
| 産業医 | 1,110万円~1,300万円 | 平日日勤のみ | ◎(緊急対応少ない) | 産業医資格 |
| 介護老人保健施設医師 | 1,200万円~1,400万円 | 平日+緊急対応 | 〇(当直少なめ) | 内科・老年医学経験 |
| 公衆衛生医師 | 770万円~1,300万円 | 公務員勤務体系 | 〇(臨床より負担少) | 臨床経験 |
| 医系技官 | 540万円~810万円 | 公務員勤務体系 | 〇(残業あり) | 論理的思考力、政策立案能力 |
| 生命保険会社診査医 | 1,000万円~1,500万円 | 平日日勤のみ | ◎(定時退社) | 内科系経験が有利 |
| コンサルティング会社 | 800万円~1,200万円 | 不規則(案件による) | △(繁忙期あり) | 経営視点、分析力 |
企業転職に必要な条件と準備

企業への転職を考える医師が準備すべきポイントについて解説します。
必要な臨床経験年数
多くの企業では3年以上の臨床経験を求めていますが、製薬会社などより専門性の高いポジションでは5~10年程度の経験が望まれることもあります。
ただし、これは目安であり、専門性や実績によっては短い臨床経験でも転職が可能なケースもあります。
専門医資格の重要性
専門医資格は必須ではありませんが、持っていることで評価されることが多いです。
特に製薬会社の場合、専門領域での深い知識を証明する資格として重視されることがあります。
語学力(特に英語)
外資系企業や国際的な業務を行う企業では、英語力が求められます。
TOEIC 700点以上が一つの目安とされていますが、ポジションによってはより高いレベルが求められることもあります。
研究経験・論文発表
製薬会社などでは、研究経験や論文発表の実績があると評価されます。
特に臨床研究や治験に関わった経験は、臨床開発やメディカルアフェアーズのポジションに応募する際に有利になります。
副業の可能性
企業への転職後も、週末などに臨床医としての活動を続けたいと考える医師は多いでしょう。
企業によって副業に対する方針は異なりますが、近年は副業を認める企業も増えています。
転職前に必ず確認しておくべきポイントです。
企業転職に向けた準備チェックリスト
▢臨床経験を3年以上積む
▢英語力の強化(TOEIC 700点以上を目指す)
▢専門医資格の取得(可能であれば)
▢研究実績・論文発表の充実
▢転職理由の明確化
▢希望する業界・職種の調査
▢医師専門の転職エージェントへの登録
▢履歴書・職務経歴書の準備
▢面接対策(志望動機の整理など)
転職の難易度と成功のポイント

医師の企業転職は、職種によって難易度が大きく異なり、需要と供給のバランス、求められるスキルの専門性、業界の参入障壁などが難易度を左右する要因となります。
ここでは、各職種の転職難易度とその理由、そして転職を成功させるために押さえておくべき重要なポイントについて解説します。
各職種への転職難易度
医師免許を活かした企業転職の難易度は、職種によって大きく異なります。
それぞれの難易度の理由を詳しく見ていきましょう。
比較的転職しやすい職種
産業医
介護老人保健施設の医師
生命保険会社の診査医
これらの職種が比較的転職しやすい理由としては、まず需要の高さが挙げられます。
産業医は労働安全衛生法によって一定規模以上の事業所に設置が義務付けられており、常に需要があります。
特に嘱託産業医の場合、複数企業を掛け持ちすることも可能で、参入障壁が低いといえるでしょう。
介護老人保健施設は高齢化社会の進展により施設数が増加しており、介護保険法で医師の配置が義務付けられているため求人が安定しています。
生命保険会社の診査医は、特定の専門領域の深い知識よりも、幅広い疾患に関する一般的な医学知識が重視されるため、様々な診療科出身の医師に門戸が開かれています。
これらの職種はワークライフバランスも比較的良好で、臨床医からの転職先として人気があります。
中程度の難易度
公衆衛生医師
矯正医官
公衆衛生医師の転職難易度が中程度である理由は、公務員採用という特性上、採用枠が限られていることが大きいです。
また、地域保健や公衆衛生学の知識が求められることもあり、ある程度の専門性が必要とされます。
矯正医官(刑務所や少年院の医師)は、矯正施設という特殊な環境での勤務となるため心理的なハードルを感じる医師も多く、応募者が限られる傾向にあります。
一方で、そのような特殊性から常に一定の需要があり、希望すれば採用される確率は比較的高いと言えます。
また、これらの職種は公務員としての安定した雇用が魅力である一方、採用プロセスに時間がかかることも特徴です。
転職難易度が高い職種
製薬会社のメディカルドクター(特に外資系)
医系技官
コンサルティング会社
これらの職種の転職難易度が高い主な理由は、求められるスキルの高さと競争率の高さです。
製薬会社のメディカルドクターでは、特に外資系企業の場合、高い英語力(TOEIC 700点以上)が必須とされ、国際学会での発表経験や論文実績、特定疾患領域での専門性など、ハイレベルな条件が求められます。
また、求人数に対して応募者が多いことも難易度を高めています。
医系技官(厚生労働省など)は、医療政策立案に関わる重要なポジションであり、採用枠が極めて限られています。
論理的思考力や政策立案能力など、医学知識以外の高いスキルも必要とされます。
コンサルティング会社では、医学的知識に加えて、分析力、論理的思考力、プレゼンテーション能力、英語力など、ビジネススキルの高さが強く求められます。
特に外資系の大手コンサルティングファームでは、選考プロセスが非常に厳しく、競争率も高いです。
こうした難易度の違いは、求人数と求職者数のバランス、求められるスキルの専門性や多様性、そして業界の参入障壁によって生じています。
転職を検討する際は、自身のキャリア目標と保有スキルを客観的に評価し、必要に応じて追加のスキル習得や経験を積むことが重要です。
また、難易度の高い職種への転職を目指す場合は、長期的な視点で準備を進めることをお勧めします。
転職のタイミング
企業への転職を考える場合、一般的には35~45歳が転職に適した年齢とされています。
若すぎると臨床経験が不足していると見なされることがあり、年齢が上がりすぎると企業文化への適応が難しいと判断されることがあります。
また、転職市場の動向も重要です。
特定の職種では求人数が限られていることもあるため、希望する職種の求人動向をチェックし、良い条件の求人が出たタイミングで応募する準備をしておくことが大切です。
成功事例から学ぶポイント
転職に成功した医師の多くに共通するのは、以下のようなポイントです。
- 明確な志向性:なぜ臨床を離れて企業で働きたいのか、そこで何を実現したいのかを明確にしている
- 自己アピールの準備:臨床経験をどう企業でのポジションに活かせるか説明できる
- 企業研究の徹底:志望企業について十分に調査し、自分の価値観との一致を確認している
- 専門家の活用:医師専門の転職エージェントなど、専門家のサポートを受けている
医師の企業転職成功事例
実際に臨床現場から企業へと転職を果たした医師たちの事例から学ぶことは多くあります。
この章では、様々な背景を持つ医師が企業転職に成功した実例を紹介します。
事例1:腫瘍内科医から製薬会社のメディカルドクターへ
Tさん(30代前半/男性)は7年間の臨床経験を経て、外資製薬会社のオンコロジー領域のメディカルサイエンスリエゾンとして転職に成功しました。転職理由は「より多くの患者に貢献したい」という思いから。転職前と同等の年収を維持しつつ、ワークライフバランスも改善しました。
採用のポイントは、臨床現場での経験を踏まえた具体的なビジョンを持ち、企業側に対して積極的に質問する姿勢を見せたことでした。
事例2:7年の臨床経験を活かして外資製薬会社のMSLへ転職
Sさん(30代前半/男性)は初期研修後の臨床経験を通じて、「医師として以上に医療全体へ貢献する道があるのでは」と考え、製薬企業への転職を決断しました。がん領域での臨床知識を武器に、外資系製薬会社のメディカルサイエンスリエゾン(MSL)のポジションを獲得しています。
選考では、実際の医療現場で医薬品をどう使用していたかという経験に基づき、企業としての製品戦略について自身の考えを具体的に述べたことが決め手となりました。医師という立場から企業人へのキャリアチェンジに対する前向きな姿勢も、適応力の高さとして評価されました。
年収は臨床医時代と同水準の約1,500万円を確保し、同時にワークライフバランスの向上も実現しています。
事例3:内科医が産業医転職で年収アップとワークライフバランスを両立
Kさん(40代前半/女性)は関東圏の総合病院で長年内科医として勤務していましたが、幼い2人の子供との時間確保を優先し、産業医への転職を実現しました。
それまでは夜勤明けの疲労で帰宅後も休息が必要な状態が続き、育児時間が十分に取れないことに悩んでいました。加えて家族の介護事情も重なり、勤務形態の見直しが急務となっていました。
転職活動では「夜勤なし」「定時退勤可能」を必須条件とし、収入面は妥協も視野に入れていました。しかし転職エージェントの紹介により、自宅近郊の大手製造業で産業医として採用され、予想に反して年収は約200万円増の1,300万円を実現。完全週休二日制により、平日の保育園送迎も可能になり、家族との時間が劇的に増えたといいます。
転職活動の効果的な進め方
企業転職を成功させるためには、計画的かつ戦略的なアプローチが欠かせません。
情報収集の方法から転職エージェントの活用法、職務経歴書の作成ポイント、面接対策まで、転職活動の各ステップにおける具体的なアドバイスと、特に医師専門の転職エージェントの選び方や、臨床経験を企業でのポジションにアピールする方法など、医師特有の転職活動のコツを解説します。
情報収集方法
企業転職を考える医師にとって、まず重要なのは情報収集です。
以下のような方法で情報を集めましょう。
医師向け転職サイトや求人情報の定期的なチェック
同業界に転職した先輩医師からの情報収集
医学部同窓会や勉強会などでのネットワーキング
医師専門の転職エージェントへの相談
転職エージェントの活用法

医師の企業転職では、医師専門の転職エージェントを活用することで、効率よく転職活動を進めることができます。
特に業界経験10年以上のコンサルタントが在籍し、2000名以上の医師の転職支援実績を持つエージェントを選ぶことで、より的確なアドバイスやサポートを受けることができます。
エージェントを活用する際のポイント
複数のエージェントを比較検討する
担当コンサルタントの経験や専門性を確認する
自分の希望や条件を明確に伝える
提案された求人に対して率直にフィードバックする
職務経歴書の作成ポイント
企業向けの職務経歴書は、臨床医として応募する場合とは異なる点に注意が必要です。
職務経歴書作成のポイント
医学用語は極力避け、一般の企業担当者にもわかりやすい表現を心がける
臨床経験を企業でどう活かせるかという視点で記載する
チームマネジメントや患者とのコミュニケーションなど、ビジネススキルに転用できる経験を強調する
学会発表や論文など、専門性を証明する実績を盛り込む
面接対策
企業の面接では、臨床能力よりも「なぜ企業で働きたいのか」「どのように貢献できるか」という点が重視されます。
面接対策のポイント
志望動機を明確にし、熱意を伝える
医師としての経験や視点がどのように企業に貢献できるかを具体的に説明する
企業文化や働き方への適応能力をアピールする
質問を準備し、企業に対する関心と理解を示す
よくある質問
医師の企業転職に関して、多くの方が抱える疑問や懸念事項にお答えします。
医師免許を持っていても転職できない可能性があるのか、企業での働き方は臨床現場とどう違うのか、臨床に戻ることは可能なのかなど、よくある質問とその回答をまとめました。
医師免許を持っていても企業に転職できない場合はある?
Q: 医師免許を持っていれば、どの企業でも採用されやすいのでしょうか?
A: 医師免許は価値ある資格ですが、それだけで採用が保証されるわけではありません。企業が求めるのは、医師免許に加えて、特定の専門知識や経験、語学力、コミュニケーション能力などです。特に外資系企業や専門性の高いポジションでは、適切な経験やスキルが求められます。また、企業文化への適応性も重要な要素となります。
企業での働き方について
Q: 企業に転職すると、臨床医と比べて労働時間はどう変わりますか?
A: 一般的に、企業での勤務は平日の日勤のみで、夜勤や当直はありません。多くの場合、土日祝日は休みとなり、ワークライフバランスは大幅に改善する傾向にあります。ただし、製薬会社などでは海外出張が頻繁にある場合があります。
Q: 企業では「〇〇先生」ではなく「〇〇さん」と呼ばれると聞きましたが、違和感はありませんか?
A: 最初は違和感を覚える医師もいますが、多くの場合すぐに慣れます。企業では肩書きではなく個人の能力や貢献が評価される文化が一般的で、むしろそれを歓迎する医師も少なくありません。
医師が辞める割合はどのくらい?
Q: 医師が臨床を辞めて企業に転職する割合はどのくらいですか?
A: 正確な統計はありませんが、厚生労働省の調査によると、34万人の医師のうち、医療施設以外の一般企業で働いている医師は800人弱と非常に少数です。ただし、この数字は増加傾向にあり、特に若い世代の医師の間では、キャリアオプションの一つとして企業への転職が認識されつつあります。
臨床へ戻る可能性
Q: 企業で働いた後、臨床医に戻ることは可能ですか?
A: 可能です。特に産業医や公衆衛生医師など、医師としての経験を維持できるポジションであれば、臨床に戻りやすいでしょう。ただし、長期間臨床から離れると最新の医療知識や技術についていくのが難しくなる場合もあるため、週末に非常勤医師として臨床経験を維持する医師もいます。
副業の許可について
Q: 企業で働きながら、週末に臨床医として働くことは可能ですか?
A: 企業によって方針は異なります。副業を明示的に許可している企業もあれば、就業規則で禁止している企業もあります。製薬会社では利益相反の観点から制限が厳しい場合があります。転職前に必ず確認しておくべき重要なポイントです。
専門医資格の維持
Q: 企業で働きながら、専門医資格を維持することはできますか?
A: 専門医資格の更新要件は診療科や資格によって異なります。多くの場合、一定時間の診療実績や学会参加、論文発表などが求められますので、企業勤務と並行して週末に非常勤医師として臨床経験を積んだり、学会活動を継続することで維持可能な場合が多いです。具体的な要件は各専門医機構に確認することをお勧めします。
まとめ:医師の企業転職を成功させるために
医師から企業への転職は、キャリアの選択肢を広げ、新たな形で医療に貢献する機会をもたらします。転職を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
企業転職成功のための5つのポイント
- 自分の強みとキャリアビジョンを明確にする
- なぜ企業で働きたいのか、どのように貢献したいのか明確にする
- 自分の専門性や経験がどう活かせるかを整理する
- 希望する職種や企業について十分に調査する
- 業界動向や企業文化、求められるスキルを理解する
- 可能であれば、既に企業で働く医師からの情報収集を行う
- 必要なスキル(英語力など)を磨く
- 特に外資系企業を志望する場合は英語力の強化が重要
- プレゼンテーションスキルやビジネス知識の習得も有効
- 医師専門の転職エージェントを活用する
- 企業求人情報の入手と条件交渉に専門家のサポートを受ける
- 業界経験豊富なエージェントを選ぶ
- 臨床経験をどう企業で活かせるかを具体的に説明できるようにする
- 企業の目線で自分の価値を表現する準備をする
- 臨床で培った経験やスキルを企業でどう活用できるか具体例を準備
企業への転職は、すぐに実現できるとは限りません。
希望する職種によっては求人数が限られていることもあるため、長期的な視点で準備を進めることが大切です。
まずは情報収集から始め、少しずつ準備を整えていきましょう。
医師の企業転職は、決して「臨床から逃げる」選択ではなく、医師としての知識や経験を社会の別の形で活かす選択です。
自分自身のキャリアを主体的に考え、より充実したプロフェッショナルライフを実現するための一歩となることでしょう。
医師の転職をご検討の際は、業界経験10年以上のコンサルタントが在籍し、2000名以上の医師の転職支援実績を持つ【S&Cドクターズキャリア】にご相談ください。
医師専門のエージェントだからこそ可能な、きめ細やかなサポートをご提供します。