医師の転職回数は多職種より多いと言われます。
平均転職回数は4～5回。医師として何度も転職していることに不安を感じていませんか？
実は、転職回数が多いことが必ずしも不利になるわけではありません。経験や事情をうまく伝えることでむしろ評価されるケースもあるのです。
実は医師の平均転職回数は4-5回と他職種より多く、転職回数の多さ自体は大きな問題ではありません。しかし、面接での説明方法や転職先選びを間違えると不利になる可能性があります。
本記事では2025年最新の統計データを基に、医師の転職回数が多い理由から成功する転職戦略まで完全解説します。転職回数の多さを武器に変える方法や、採用担当者が本当に重視するポイントも詳しくお伝えします。
[supervisor_profile]
医師の平均転職回数は4-5回：他職業との比較分析
医師の転職回数は平均4-5回と言われており、これは他の職種と比較して明らかに多い数値です。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(※)」によると、医師の平均勤続年数は8.3〜8.4年となっており、一般的な会社員の平均勤続年数12.1年と比べて短いことが分かります。
職業別転職回数比較表
| 職業 | 平均転職回数 | 平均勤続年数 |
| 医師 | 4-5回 | 8.3-8.4年 |
| 一般会社員 | 2-3回 | 12.1年 |
| 看護師 | 3-4回 | 8.2年 |
| 薬剤師 | 3回 | 10.5年 |
勤務先の種類によって転職回数には大きな差があります。
大学病院勤務の医師は医局制度により転職回数が比較的少ない傾向にありますが、市中病院や診療所で働く医師の転職回数は多く、大半が転職経験を持っています。
※参考：https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/index.html
なぜ医師は転職回数が多いのか？5つの根本的理由
医師の転職回数が多い理由は以下の5つです。
- 医師不足
- キャリアアップとスキル向上の必要性
- ワークバランスの改善ニーズ
- 給与・待遇の差が大きい
- 医局制度の変化と働き方の多様化
1つずつ解説します。
医師不足による売り手市場の継続
日本では慢性的な医師不足が続いており、これが医師の転職を促進する最大の要因となっています。特に地方での不足が深刻です。
この医師不足により、医師の転職市場は完全な売り手市場となっています。そのため、医師は転職先を見つけやすく、条件の良い職場があれば比較的気軽に転職を決断できる環境にあります。
地方ほど医師不足が深刻で、高い給与や手厚い待遇で医師を確保しようとする医療機関が多く、これが転職の誘因となっています。
キャリアアップとスキル向上の必要性
医師は専門性の高い職業であり、より多くの症例を経験し、スキルを向上させるために転職を選択することが珍しくありません。
特に専門医取得を目指す医師にとって、必要な症例数を確保できる医療機関への転職は必須となります。
内科系では症例数確保のため、外科系では手術経験積み重ねのため、それぞれ最適な環境を求めて勤務先を変更するケースが多く見られます。
また、サブスペシャリティ取得や新しい医療技術の習得、研究活動の充実などを求めて転職する医師も増加しています。
医療技術の進歩が早い現代において、継続的な学習と経験の蓄積は医師にとって重要な課題となっています。
ワークライフバランス改善への強いニーズ
「厚生労働省の『令和元年 医師の勤務実態調査』によると、病院常勤勤務医のうち、男性医師の41%、女性医師の28%が週60時間以上勤務しており、特に週80時間以上（過労死ライン相当）で勤務する医師は男性9%、女性6%となっています。」
転職理由ランキング
- 労働時間の改善
- 給与・待遇の向上
- 人間関係の問題
- キャリアアップ
- 通勤時間の短縮
※S&Cドクターズキャリアの医師転職支援の実績より作成
給与・待遇の差の大きさが生む転職動機
医師の年収は勤務先によって大きく異なり、この年収格差は、多くの医師にとって転職を検討する大きな要因となっています。同じ診療科でも勤務先により年収に2倍以上の差が生じるケースもあります。
施設別医師平均年収目安
- 美容クリニック：＿1,800〜2,400＿＿＿万円
- 都市部市中病院：＿1,400〜1,800＿＿＿万円
- 大学病院：＿800～1,200＿＿＿万円
- 地方公立病院：1,500〜2,000＿＿＿＿万円
- 診療所：＿1,200〜2,000＿＿＿万円
この大きな格差により、より良い待遇を求めて転職する医師が後を絶ちません。
特に30-40代の働き盛りの医師にとって、家族の生活費や子どもの教育費などを考慮すると、年収向上は重要な転職理由となります。
医局制度の変化と働き方の多様化
2004年の新臨床研修制度導入以降、医局制度は大きく変化し、医師の働き方も多様化しています。
従来は医局人事により勤務先が決定されることが多かったのですが、現在は医師自身が転職先を選択する機会が増えています。
また、近年では以下のような新しい働き方が注目されており、これらの選択肢を求めて転職する医師が増加しています。
- 産業医への転身
- 美容医療分野への参入
- 在宅医療・訪問診療の拡充
- フリーランス医師としての活動
- オンライン診療の活用
これらの多様な働き方により、医師のキャリアパスは従来よりも複雑化し、結果として転職回数の増加につながっています。
医師の転職回数が多い事で生じる2つのデメリットと対処法
転職回数が多い事で2つのデメリットが生じます。
- 退職金減少リスク
- 採用時の印象が悪い
医師の転職に限らず、ほとんどの職種で同じことでしょう。
退職金減少のリスク
転職回数が多いことで最も具体的に影響を受けるのが退職金です。多くの医療機関では勤続年数に応じて退職金が支給されるため、短期間での転職を繰り返すと退職金が支給されなかったり、総額が大幅に減少したりする可能性があります。
勤続年数別退職金比較例（私立病院の場合）
- 3年勤務：＿30＿万円
- 5年勤務：＿80＿万円
- 10年勤務：＿200＿万円
- 20年勤務：＿600＿万円
転職を4回繰り返し各職場で5年ずつ勤務した場合の退職金総額は約＿＿320＿万円となり、1つの職場で20年勤務した場合と比べて約＿240＿万円の差が生じます。
退職金減少リスクへの対処法
- 転職前に各職場の退職金制度を必ず確認
- 確定拠出年金（iDeCo）や投資信託で不足分を補完
- 転職時の年収アップで退職金減少分をカバー
- 長期勤務が見込める職場を慎重に選択
採用時の印象が悪い
転職回数が極端に多い場合（10回以上）や短期間での転職を繰り返している場合、採用担当者に「定着しない人材」という印象を与える可能性があります。
医師転職エージェントの調査では、採用担当者が警戒する転職パターンは以下の通りです。
警戒される転職パターン
- 転職回数が10回以上
- 1-2年での短期離職を複数回
- 転職理由が不明確
- 前職の批判的な発言
- 勤務期間と転職回数のバランスが悪い
対処法
- 各転職にポジティブな理由を用意
- 転職により得られた経験・スキルを整理
- 長期勤務への意欲を具体的に示す
- 面接では前向きな表現を心がける
転職回数を前向きな理由に変える！医師転職の成功方法とは？
転職回数の多さを前向きな理由に変え、採用担当者に好印象を与えるための方法を紹介します。
転職理由の明確化
転職回数が多い医師が面接で成功するためには、各転職に明確で納得できる理由があることを示すことが重要です。採用担当者が納得しやすい転職理由の例をご紹介します。
高評価される転職理由
- 専門医取得のため
- 「循環器内科専門医取得に必要な症例数を確保するため、症例豊富な○○病院に転職しました」
- スキルアップのため
- 「より高度な手術技術を身につけるため、ハイボリュームセンターである○○病院に移りました」
- ライフステージの変化
- 「出産を機に、育児支援制度が充実した○○クリニックに転職しました」
- 地域医療への貢献
- 「故郷の医師不足解消に貢献したく、地元の○○病院に転職しました」
面接で好印象を与える転職回数の説明
転職回数の多さを面接で説明する際は、以下のポイントを意識することで好印象を与えることができます。
効果的な説明の構成
- 転職の背景説明：客観的な状況を簡潔に説明
- 学習・成長の証明：各転職で得られた経験・スキルを具体的に示す
- 将来への活用：蓄積した経験をどう活かすかを説明
- 長期勤務への意欲：今回の転職で長期勤務したい理由を明示
説明例
「これまで4回の転職を経験しておりますが、それぞれに明確な目的がありました。初回は専門医取得のため症例数の多い病院へ、2回目は救急医療スキル向上のため救命救急センターへ、3回目は地域医療に貢献したく地方病院へ、4回目は家族の転勤に伴う移転でした。各職場で多様な症例と医療体制を経験し、幅広い対応力を身につけることができました。御院では、これまでの経験を活かし、長期的にチーム医療に貢献したいと考えております。」
経験とスキルを最大限アピールする
転職経験の多さは、適切にアピールすれば強力な武器となります。
多様な職場で働いた経験を以下のように整理してアピールしましょう。
アピールポイント整理表
| 経験分野 | 具体的内容 | 得られたスキル |
| 急性期医療 | 救命救急センター勤務 | 迅速な判断力、危機管理能力 |
| 慢性期医療 | 療養型病院勤務 | 継続的ケア、多職種連携 |
| 地域医療 | 診療所勤務 | 幅広い診療能力、地域住民との関係構築 |
| 専門医療 | 大学病院勤務 | 高度専門知識、研究・教育経験 |
転職回数が多い医師は転職エージェントの活用がおすすめ
転職回数が多い医師にとって、転職エージェントの活用は成功の鍵となります。専門のコンサルタントが転職回数の多さをカバーする戦略を提案し、採用担当者との効果的な交渉を行ってくれます。
転職エージェント活用のメリット
- 個人の状況に応じた戦略立案
- 転職理由の整理・表現方法の指導
- 採用担当者への事前説明とフォロー
- 非公開求人への優先的なアクセス
- 面接対策とフィードバック
転職エージェントを選ぶ際は、以下の点を確認することが重要です。
転職エージェント選択のチェックポイント
- 医師専門のコンサルタントが在籍しているか
- 転職回数の多い医師の支援実績があるか
- 面接対策や書類添削サービスが充実しているか
- 長期的なキャリア相談に対応してくれるか
- 転職後のフォローアップ体制があるか
医師転職後の定着率を高めるには？
転職回数を減らすためには、新職場での早期適応が重要です。
積極的なコミュニケーションを心がけ、業務上の疑問は躊躇せずに質問し、同僚との交流を大切にしましょう。職場ルールの早期習得では、医療安全ルールの徹底遵守と電子カルテシステムの習得が必須です。
転職理由として挙げた専門性を積極的に発揮し、得意分野での症例対応や業務改善の提案を通じて、専門性を活かした貢献を示すことが重要ですまた、学会参加や新技術習得など継続的な学習姿勢を維持し、適切なワークライフバランスを保つことで長期勤務が可能になります。
長期勤務を可能にする職場を選ぶことが大切
職場選択では、月残業80時間以下・有給取得率70%以上などの労働環境の適正性と、スタッフの雰囲気や医師同士の連携といった人間関係の良好さを重視しましょう。
さらに症例数や専門医取得支援などのキャリア発展の可能性、適正な給与と充実した福利厚生などの待遇面、そして病院の経営状況や将来性も慎重に判断することが大切です。
計画的なキャリア設計をしよう
不要な転職を避けるため、価値観と強み弱みを把握する自己分析を行い、5年後・10年後の明確な目標設定をしましょう。年1回のプラン見直しにより環境変化に対応し、目的意識を持った計画的な転職が可能になります。
よくある質問：医師転職回数に関するQ&A
医師の転職回数についてよくある質問を纏めました。
転職回数10回以上は絶対に不利になりますか？
転職回数10回以上でも、必ずしも不利になるわけではありません。重要なのは、各転職に明確な理由があり、それを説明できることです。
実際に転職回数12回の循環器内科医師が、「各転職で異なる専門領域を経験し、総合的な循環器疾患に対応できる能力を身につけた」というアピールで、希望する病院への転職に成功した事例があります。
転職回数10回以上の場合の対策
- 転職理由の一覧表を作成し、論理的に説明
- 各職場で得た経験・スキルを具体的に整理
- 長期勤務への強い意欲を示す
- 転職エージェントによる事前フォローを依頼
転職エージェントを使わない転職は可能ですか？
転職エージェントを使わない転職も可能ですが、転職回数が多い医師にとってはリスクが高いため、エージェントの活用をおすすめします。
転職エージェントを使わないリスク
- 転職理由の説明が不十分になる可能性
- 採用担当者への事前フォローができない
- 面接対策が自己流になってしまう
- 給与交渉で不利になる可能性
転職エージェントを使わずに成功する条件
- 明確で説得力のある転職理由がある
- 優秀な面接スキルを持っている
- 医療機関との強いコネクションがある
- 高い専門性と実績がある
転職回数が多い場合は、専門家のサポートを受けることで成功確率を大幅に向上させることができます。
まとめ：転職回数の多い医師が成功するためのポイント
- 各転職に明確な理由と学習成果がある
- 豊富な経験を武器として活用する
- 長期勤務への意欲を具体的に示す
- 転職エージェントを効果的に活用する
- 新職場での早期適応を図る
転職回数の多さは、適切にアピールすれば大きな強みとなります。本記事の内容を参考に、自信を持って転職活動に取り組んでください。