多くの医師が「土日は休みたい」と願っていますが、現実には週末も勤務が続くケースが少なくありません。
本記事では、土日休みが実現できる職場の特徴と、そのような職場への転職を成功させるための具体的なポイントを詳しく解説します。
医師が土日休みを取りにくい3つの理由

医師の土日休みの取りやすさは勤務先や診療科によって異なりますが、多くの病院勤務医にとっては難しいのが実情です。
その背景には次の3つの理由があります。
- 医師不足による業務量の増加
- オンコール制度による休日呼び出し
- 24時間対応が求められる医療現場
一般的に、当直やオンコールがある病院勤務の医師や、美容系クリニックの医師は土日休みが少ない傾向にありますが、特定の診療科、産業医など、土日休みを取りやすい職場や働き方も存在します。
医師不足で一人当たりの業務量が多い
日本の医師数(常勤医療提供者数)は、最新のOECD統計(2020年)で人口千人あたり約2.6人です。
一方、OECD加盟国全体の平均は、2021年時点で人口千人あたり約3.7人でした。
根本的な医師不足により、一人の医師が担当する患者数が多く、土日も含めた長時間勤務が常態化しています。
特に地方の病院では、医師一人が複数の診療科を兼任することも珍しくありません。
このような環境では、毎週土日に休むことは現実的に困難です。
※参考文献
・Japan: Doctors per 1,000 people
・ODEC
オンコール制度で休日も呼び出しがある
多くの病院では、医師が交代でオンコール(緊急時の呼び出し待機)を担当しています。
たとえ休日であっても、緊急手術や重篤患者の対応で病院に呼び出されることがあります。
救急指定病院の場合、24時間365日体制での対応が求められるため、土日に完全に仕事から離れられる完全オフは取りにくいのが現実です。
24時間対応が求められる医療現場の現実
医療は24時間対応が求められる「待ったなし」の分野です。
患者の容体急変や緊急手術は、曜日や時間を選びません。
このため、医師には常に対応可能な状態でいることが期待され、土日休みの取得を困難にしています。
土日休みを取りやすい医師の職場5選
医師が土日休みを取れる職場は、実は思っているより多くの選択肢があります。
以下の5つの職場では、土日休みを取りやすい環境が整っています。
職場 | 土日休み度 | 年収相場 | 主な理由 |
無床クリニック | ★★★★★ | 1,200万~1,800万円 | 入院患者なし 緊急対応なし |
療養病院・リハ病院 | ★★★★☆ | 1,200万円 | 状態の落ち着いた患者対応が主 |
健診センター | ★★★★☆ | 1,000万~1,500万円 | 平日中心、予防医学 |
産業医 | ★★★★★ | 800万~1,200万円 | 企業カレンダー勤務 定時退社 |
製薬会社 | ★★★★★ | 1,000万~1,800万円 | 企業勤務、土日完全休み |
無床クリニック

無床クリニックは、入院施設を持たない外来専門の診療所です。
入院患者がいないため、夜間や休日の緊急対応がほとんどありません。
特に皮膚科や眼科、整形外科などの専門科目では、緊急性の低い疾患を扱うことが多く、クリニックにもよりますが、土日休みを取りやすい環境が整っています。
無床クリニックの年収は、都市部と地方で大きく異なります。
東京都内のクリニックでは年収2,000万円を超える案件もありますが、地方の内科クリニックでは1,200~1,800万円程度が相場です。
療養病院

土日休みを取りやすい職場として、療養病院(慢性期病院)や回復期リハビリテーション病院も有力な選択肢です。
これらの病院は、急性期病院と比べて緊急対応が少なく、計画的な診療が可能な点が特徴です。
慢性期の患者や回復期リハビリ患者が中心で、救急搬送がほとんどありません。
外来診療は少なく、病棟管理が中心で業務がルーチン化しており、休日シフトを組みやすい環境です。
また、夜間の救急受け入れを行わない、または頻度が極めて少ないケースが多く、休日の呼び出しがほとんどありません。
チームで患者を診る体制が整っており、週末の担当を交代で回すことが可能です。
ただ、年収相場は若干下がります。
1,200万~1,800万円程度です。
療養病院や回復期リハ病院は、「完全土日休みを取りたいが病院勤務を続けたい」という医師に適した職場です。
ワークライフバランスを重視しつつ、安定した勤務環境を求める方におすすめできます。
健診センター・外来中心医療機関

健診センターや外来診療を中心とした医療機関は、平日の日中がメイン業務時間となるため、土日休みを取りやすい職場です。
企業健診、人間ドック、がん検診などの予防医学業務が中心となり、緊急性の高い対応はほとんど必要ありません。
健診センターの医師年収は、経験年数と役職により変動します。
一般医師で1,000万~1,200万円、センター長クラスになると1,500万円以上も可能です。
予防医学の知識が深まり、生活習慣病の指導スキルが向上します。
高齢化社会において、予防医学の需要は今後も拡大が予想されるため、将来性の高い分野といえます。
産業医

産業医は企業や組織で働く従業員の健康管理を行う医師で、土日休みを最も確実に取れる職種の一つです。
企業カレンダーに従った勤務となるため、土日祝日は確実に休みとなります。
主な業務は従業員の健康診断結果の管理、職場環境の改善提案、メンタルヘルス対策、労働災害の予防などです。
緊急対応はほとんどなく、定時での退社が可能です。
産業医の年収相場は800万~1,200万円で、複数企業を掛け持ちする嘱託産業医という働き方もあります。
製薬会社・医療関連企業

製薬会社や医療機器メーカーなどの医療関連企業で働く医師は、企業カレンダーに従った勤務となるため、土日祝日が確実に休みとなります。
メディカルアフェアーズ、臨床開発、薬事、安全性情報管理などの部門で医師の専門知識が活かされています。
製薬会社勤務医師の年収相場は1,000万~1,800万円で、外資系企業では2,000万円を超える場合もあります。
企業勤務のため、有給休暇の取得率も高く、福利厚生も充実しています。
また、グローバルな視点での医学知識や、ビジネススキルも身につけることができます。
医師転職エージェントを使えば土日休み求人を見つけやすい
土日休みの医師求人を効率的に見つけるには、医師専門転職エージェントの活用が欠かせません。
一般的な転職サイトでは見つからない非公開求人にアクセスできることが最大のメリットです。
非公開求人にアクセスするには、複数のエージェントに登録し、積極的に情報収集することが重要です。
条件交渉では、完全土日休みか月数回の土曜出勤があるか、オンコール対応の有無、代理医師制度の整備状況、有給休暇の取得実績を明確にしましょう。
これらの条件を書面で確認することが、転職後のトラブル回避につながります。
転職体験談:大学病院→無床クリニック
大学病院で10年間勤務していた田中医師(仮名・内科医・35歳)は、週6日勤務で月の休みが4日程度という激務に疲弊していました。
結婚を機に、家族との時間を大切にしたいと考え、転職を決意しました。
転職活動期間は約3ヶ月で、最初の1ヶ月で転職エージェントに登録し求人情報を収集、2ヶ月目に書類応募と面接準備、3ヶ月目に面接と内定獲得という流れとなり、合計5施設に応募し、3施設から内定を獲得しました。
転職前の大学病院では週6日勤務で勤務時間は8:00〜20:00(平均)、月4回のオンコールがあり、年休取得日数はわずか5日でした。
転職後の無床クリニックでは、週5日の完全土日休み、勤務時間は9:00〜18:00、オンコールはなし、年休取得日数は20日と劇的に改善されています。
年収は大学病院時代の900万円から1,800万円に倍増しました。
給与アップに加えて、プライベート時間が大幅に増え、家族との関係も良好になりました。
田中医師は「転職して本当に良かった。医師としてのスキルを活かしながら、家族との時間も確保できる理想的な働き方が実現できた」と語っています。
土日休み求人=メリットばかりとは限らない
土日休みの職場は、時間的な余裕が生まれやすく、ワークライフバランスの面では魅力的です。
しかし、特に企業勤務や健診センターなどでは診療領域が限定される場合があり、臨床スキルや経験の幅を維持・向上させる機会が限られることもあります。
それが結果的に将来の可能性を狭めることになる恐れもあります。
そのため、転職先を選ぶ際には「休日の多さ」だけで判断せず、将来のキャリアプランや医師としてのスキル維持とのバランスを慎重に検討することが重要です。
まとめ
医師が土日休みを確実に取るためには、入院施設がない、またはオンコール制度が最小限の職場を選びましょう。
土日休みのクリニック、療養病院、リハビリテーション病院、健診センター、産業医、製薬会社がおすすめです。
これらの職場は緊急対応が少なかったり、企業カレンダーでの勤務だったりするるため、土日休みが確実に確保できます。
土日休みの職場への転職を成功させるためには、医師専門転職エージェントへの登録をおすすめします。
非公開求人情報を積極的に収集し、職場見学などを通じて、働き方を確認してみましょう。
医師として充実したキャリアを築きながら、プライベートも充実させる働き方は十分に実現できます。
転職は人生を変える大きな決断ですが、適切な準備と情報収集により、必ず成功につなげることができるでしょう。